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世界で初めての医薬品の合成それは
サリチル酸、アスピリン
(アセチルサリチル酸)

世界一古くて、新しい薬 『120年後の現在』 も一般用医薬品、世界上位の売上を達成

ヒポクラテス ヒポクラテ
アスピリンの源流は紀元前に溯ることができます。紀元前40
0年ごろ、ヒポクラテスはヤナギの樹皮を熱や痛みを軽減す
るために用い、葉を分娩時の痛みを和らげるために使用して
いたという記録があります。
ヤナギの鎮痛作用はギリシャ時代から知られていたのです。
古代ローマの「薬物誌」では、ヤナギには腹痛、痛風、リウ
マチなどに対する鎮痛作用のほかに、出血を止める作用、
ウオノメやタコをなおす作用があると記されています。
おそらく、ちょっと体調に異変があると、すぐにヤナギの樹
皮を煎じて飲む「漢方薬」のような使い方が日常的に行われ
ていたと想像されます。
医学の父と呼ばれる偉大なギリシャの医師ヒポクラテスは、
ヤナギの樹皮を鎮痛・解熱に、葉を分娩の痛みの緩和に用い
たと言われている。中世には薬草売りの女性たちが、ヤナギ
の樹液を煮て、その苦い煎じ湯を痛みを訴える人々に分け与
えていました。
しかし、籠を作るためにヤナギの木が緊急に必要とされるよ
うになり、ヤナギを摘むことが罰せられるようになったため
、この自然の特効薬は忘れられて行きました。

柳の木からサリチル酸、アスピリン

紀元前より、ヤナギの樹皮の抽出エキスは鎮痛・解熱のために用いられており、古代インドや中国、ギリシャでもヤナギの鎮痛効果はよく知られていました。有機化学の元になる炭化水素について原子の性質メタン、エタンの構造式が解明。1866年ケクレは薬の合成の元になるC6H6のベンゼン環の構造を解明したこれにより薬品の合成が出来るようになったエドワードストン神父がサリックスアルバ(柳の木の一種)の葉より6年かけてヤナギの樹皮から薬効成分としてサリシンを分離。サリシンの分解物であるサリチル酸の抗リウマチ作用確認。天然サリチル酸に代わって、合成サリチル酸を利用。解熱に優れた効果があることが分かり、リウマチ熱の治療に用いられていましたが患者が耐えられないほどの苦味や胃障害など重大な副作用がありました。その後ドイツバイエル社のフェリックス・ホフマン博士は、リウマチを患う父の苦境を救うべく、これに変わる副作用の少ない新しい抗リウマチ薬の開発に没頭していました。そしてついに1897年8月10日、この日フェリックス・ホフマンはサリチル酸をアセチル化して副作用の少ないアセチルサリチル酸の合成に成功しました、弱冠29才の若さで、これが、世界で最もよく使われているアスピリンの誕生した瞬間です。世界で初めてアスピリンの合成に成功した、しかも116年以上たった現在も世界で使用されている医薬品です。

      
アスピリン、月へ。そしてエベレストへ

  アスピリン合成より約70年後、1969年7月12
日、アメリカの宇宙飛行士ニール・アームスロング船
長による人類初の月面着陸。実はこの時、彼が月面に
携えていった薬箱にはアスピリンが入っていた。アポ
ロ11号にバイエルのアスピリンが搭載されていまし
た。狭い宇宙船の中で宇宙飛行士は同じ姿勢を保ち続
けるため、ひどい筋肉痛になります。アスピリンはこ
の痛みに効果を発揮しました。当時のNASA医学担
当者は『アスピリンのおかげて宇宙飛行士は頭痛や筋
肉痛に悩まされずにすんだ。アスピリンは今後も宇宙
船に常備されるでしょう』と語った。


エベレスト
1992年、
地球の最高峰、エベレストにも、オランダの登山隊が
登頂する際に、アスピリンを携帯しました。こちらは
アスピリンによる、血液の流れを良くする効果を期待
したもの。高山病特有の症状の克服のために、使用さ
れたといいます。

1969年7月12日人類初の月面着陸

父親想いの化学者の夢が、人々を救った
フェリックス、ホフマン
      アスピリンの有効成分はアセチルサリチル酸。フェリックス、ホフマンが世界で初めて純粋かつ安定した形で合成した。
彼を研究に駆り立てたのはリュウマチを患っていた父親の存在でした。
当時のリュウマチの治療薬にはサリチル酸が用いられていた。この薬の欠点は強い苦みと副作用にありました。父親が安心して飲めるリュウマチ薬の開発を志し、ホフマンはアセチルサリチル酸に出会います。アセチノサリチル酸は過去に何人かの科学者によって合成はされていたものの、原料のサリチル酸が残り、また不純物が混ざっていたため実用化されるにはいたらなかった化合物です。先人達の研究を検証し、多くの実験を重ねたホフマンは、ついに夢を叶えました。人々がアスビリンを手に入れ、痛みから解放されたのはそれから2年後の1899年のことでした。
Felix Hoffmann 1868年ドイツ、ルートビヒスブルグ生まれ 1894年ドイツ バイエル社入社。1897年8月10日アセチルサリチル酸合成、弱冠29才

アセチルサリチル酸で地球と月を往復する
 アスピリン使用量は毎年およそ5万トンにのぼる。これは500mgの錠剤で約1,000億錠分にあたり、これを一直線に並べると100万km以上になる。これは地球と月を十分往復できる距離だ。 ちなみにアスピリンは1950年には世界の鎮痛剤のベストセラーとしてギネスブックに掲載された。

一般用医薬品中、世界ナンバー3の売上を達成
 1997年、バイエルアスピリンは世界70カ国以上で総額10億ドイツマルクの売上を達成。これは世界で販売されている全ての一般用医薬品の中で、3位にランクされる売上だ。バイエル製品としても、医療用医薬品のアダラート(20億マルク)とシプロフロキサシン(30億マルク)に次ぐ10億マルクブランドである。

意外? 作用機序は80年間ナゾだった。抗血小板作用のアスピリン
 アスピリンの作用は確かに効果的だったが、その作用機序は長い間謎だった。1971年にはじめてイギリスのジョン・ヴェインがアセチルサリチル酸の作用機序(プロスタグランジン合成抑制作用)を解明。プロスタグランジンとは組織ホルモンで、身体の痛みの伝達に作用するものだ。この発見によりヴェインは1982年にノーベル医学賞を受賞した。 さらにアスピリンに薬理作用として血小板凝集抑制作用も確認され、心筋梗塞や脳梗塞の予防的効果が期待されている。日本では、その抗血小板作用は知られていたものの、薬事法上は解熱、鎮痛、消炎剤としての効能しか認められておらず、抗血小板としては、適用外で使われていました。平成12年9月ようやく抗血小板製剤としてのアスピリンが新たに薬価収載されました。アスピリン製剤はその用量により『抗血小板製剤』と『解熱、鎮痛、消炎剤』に分けられます。今では使用される多くの部分がその抗血小板作用による血栓を防ぐ作用を目的に使われています

子供への使用は注意
インフルエンザやおたふくかぜ、水疱瘡の時にアスピリンを使用すると、ライ症候群という死亡率の高い危険な疾患になる可能性が高いことが報告されています。小児用の鎮痛剤購入の折りは薬剤師に必ず相談の上お買い上げ服用下さい。
アスピリンはピリン系ではない
ピリン系鎮痛剤は『イソプロピルアンチピリン』、『スルピリン』といった成分の薬です。アスピリンはピリンの名前が付いていても、ピリン系とは全く違う薬です。ピリン系アレルギーのある人でもアスピリンは大丈夫という可能性は大いにあります。

さらなる可能性へミラクルドラッグ

アスピリンは解熱鎮痛薬として誕生以来、1フ0年の時を経ても、その価値は色褪せるどころか、さらに広がり、可能性に満ち溢れています。がん領域における可能性もそのひとつ。1988年オーストラリアの疫学者クーネが、アスピリンを服用している人の大腸がんの罹患率は、服用していない人より約40%も低いことを発表しました。クーネは本来は別の目的で研究を手掛けていたのですが、試験結果の解析中に偶然このことを発見しました。その後、米国がん協会による大規模な調査など数多くの研究が行われ、アスピリンの大腸がんに対する予防効果が確認されています。しかしながら最適な用法・用量や適応症など、まだ検討すべき課題は残されており、今後の研究結果が期待されています。その他にも現在、アルツハイマー病や糖尿病領域などに対する研究も行われています




アスピリンについての基本情報

    アスピリンの効能・作用……効能は『リウマチ,関節炎,発熱・頭痛,痛風の痛み,神経痛,腰痛症,筋肉痛,捻挫痛、月経痛などの痛みの鎮静』です。バイアスピリンの効能は『血栓の予防・塞栓形成による心疾患や脳梗塞の予防』で、ドラッグ大国のアメリカでは脳血管性障害(脳梗塞)や心筋梗塞(心疾患)の予防のためにバイアスピリンを常用的に服用している国民が相当数います。アスピリンは一般名を“アセチルサリチル酸 (Acetylsalicylic acid)”といいますが、日本の薬局方ではアスピリンが正式名称となっています。アスピリンは非ステロイド系の代表的な消炎鎮痛剤であり、脳の中枢神経系(体温調節中枢)に作用することで発熱を下げて痛み・腫れを緩和します。血液中の血小板の凝集作用を抑制する効果があるので、狭心症・心筋梗塞・脳梗塞の予防のためにアスピリン・バイアスピリンが使用されることもあります。   
化学式   C9H8O4
 アセチルサリチル酸

古代ギリシアの医聖ヒポクラテスの時代には、既にヤナギの木の成分が『解熱・鎮痛作用』を持つことが分かっており、科学的な医学が発達を始めた19世紀にヤナギからサリチル酸の薬効成分が抽出されました。アスピリンが製薬会社に開発されるまでは、サリチル酸が解熱鎮痛剤として使用されましたが、サリチル酸には強い胃腸障害の副作用があり簡単に処方することができない薬でした。1897年にドイツの化学会社バイエル社の研究員フェリックス・ホフマンが、サリチル酸をアセチル化して消化器の副作用が少ないアセチルサリチル酸の合成に成功し、この時から現在に至るまでアスピリンは世界で最もポピュラーな解熱鎮痛剤となっています。アスピリンは世界で初めて人工合成された医薬品としても知られますが、アメリカではアスピリンの過剰消費(病気でもない人のアスピリン常用・サプリメント化)による消化器疾患の発生などが問題となっています。

アスピリンの商品名……アスピリンの粉薬(エビス・日本新薬・田辺三菱・東海・マイラン製薬・吉田・山善・ニプロファーマ・健栄など),アスピリンの錠剤(小林化工),アスピリン腸溶(マイラン製薬),サリチゾン(昭和薬化工),バイアスピリン(バイエル薬品),ゼンスピリン(全星薬品・沢井・日医工),配合剤のE・A・C(大正富山)

アスピリンの平均的な用法・用量……1回0.5mg〜1.5mgを1〜3回服用。バイアスピリンは1錠100mgを1回。配合剤は1回2〜3錠を3〜4回服用。

アスピリンの副作用……過敏症(発疹・むくみ),胃痛,吐き気,嘔吐,胃炎,消化管出血,めまい,頭痛,興奮,倦怠感,食欲不振など。

アスピリンの重大な副作用(発症頻度は低い)……ショック,喘息発作,紅皮症(皮膚の激しい炎症),中毒性表皮壊死症,皮膚粘膜眼症候群,再生不良性貧血など。

アスピリンの注意・禁忌……注意を要する人は、消化性潰瘍の既往がある人,血液疾患がある人,肝機能障害・腎機能障害・心機能障害があったり既往がある人,手術が終わったばかりの人,アルコールを常用している人,妊婦など。処方してはいけない禁忌は、アスピリンやサリチル酸系薬剤で過敏症の既往がある人,アスピリン喘息,水疱瘡の子ども,12週間以内に出産予定の妊婦,消化性潰瘍,消化管からの出血,血液異常



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ハイデルベルグの薬事博物館の日本語ホームページです。

http://www.deutsches-apotheken-museum.de/japanese/index-jp.php





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